今月初めに行った長野県長野市では、JBN中大規模木造委員会のメンバーで県立長野高校の旧校舎「金鵄(きんし)会館」を特別に見学させていただきました。
ご案内にはこの建物を管理されている一般社団法人長野高等学校金鵄会(同窓会)事務局長の原様がご対応いただきました。
お忙しいところ誠にありがとうございました。
昭和13年竣工との事でしたので築84年になるのでしょうか。
太平洋戦争以前の時期に建てられた趣のある木造校舎です。
かつてはロの字型に建物があったそうですが、新校舎への建替えやグランドの整備などで一部が解体され、現在は一番南にあたる校舎が保存されております。
保存活動が適切に行われているようで外観はとても良い状態にみえました。
金鵄の「鵄」は鳥の「トビ」を漢字にしたものです。
建物の名前の由来をうかがったところ、校章から来ているとわかりました。
掲示されている看板が校章の鳥の姿なのだと思います。
保存改修時の図面も見せていただきました。
これを見るだけでゾクゾクしてしまいます。
外壁に使われていたスクラッチタイルです。
神奈川県庁の本庁舎にもスクラッチタイルが使われておりますがこうして年月を経てさらに素敵に見えます。
車寄せ部分には別の色のスクラッチタイルが使われておりました。
玄関正面の階段です。
重厚な作りの階段はこの様な校舎で学んだ経験が無くてもなぜか懐かしさを感じます。
色も黒光りして本当に美しいです。
階段を駆け上る生徒さんの声がいまにも聞こえてきそうでした。
教室は4間×4.5間という空間です。
自然とDNAに刷り込まれたサイズになります。
教室は現在も色々な目的で使われております。
作りつけられはめ込まれた黒板も懐かしい雰囲気です。
廊下は9尺幅で真っすぐに伸びていきます。
最初のJISA3301に即した形で建てられている事がわかりますね。
床下地の劣化でところところで床の撓みなども感じますが、歩行して不安を感じるほどではありません。むしろ味わいです。
外観にもシンボリックに見えた中央の屋根が突出している部分の部屋です。
実はこの部分は保存活動に合わせて改修されているそうです。もともとは平天井があり、屋根が突き出している部分は小屋裏になっていたそうです。
解体された校舎部分の鬼瓦や棟飾りなども展示されておりました。
一つ一つが興味深いのでじっくりと眺めておりました。
玄関も利用当時の姿のまま保存されております。
腰板と装飾の縁は大工さんのセンスなのでしょうか。
大正時代の洋館などでも良く見負けます。
ドアは内開きになっていたがとても気になりました。
ご厚意で建替えられた校舎も少し見学させていただきました。
新校舎は旧校舎のイメージのままRC造で建てられております。
屋根の瓦屋外壁の色遣いなどもイメージの延長にあります。
階段も旧校舎の階段のオマージュといえます。
格子状の手摺下の腰壁部分は違いますが、親柱のデザインは全く一緒です。
シンメトリーの安定的なプロポーションに片側廊下に教室が配置されたつくりはこうして学校としての用途を終えた後も様々な利用がしやすい作りです。
奇をてらわなずとも木造の建物は経年で美しく人々に愛されることが良くわかりました。
長野高校の皆さま、貴重な機会をいただきまして誠にありがとうございました!