大工の血と誇り

先週は再び埼玉県熊谷市でお打合せがありました。

打合せ時間より少し早く熊谷入りをして、以前の職場の現場で何度もお世話になった、地元の白根工務店白根棟梁の作業場に寄らせていただきました。

写真は白根さんが手掛けた住宅です。

手刻みで加工した折り重なる木組みが印象的ですね。

白根工務店は熊谷で14代、約300年続けている老舗の大工工務店です。

白根さんは25年近く経っていても見た目はほとんど変わらない、驚異的な方です(笑)現在61歳ですので、今改めて思い返すと当時は30代後半のバリバリの棟梁だったのですね(当時から頭は変わらないので老けているとおもっていました(笑))。

白根さんは大学を卒業した後にゼネコン勤務で施工管理を経て家業に戻り修行に入りました。

私がお世話になっていた時には、無口で眼光の鋭いお父様(親方)の姿を時折見かけておりました。

当時は兄弟子の2名と弟弟子1名の4名体制で木工事をしてもらっており、明るく朗らかな白根さんを慕って現場では私も色々と仕事を教わり、プライベートでも食事をご馳走になったりしておりました。

仕事以外の事も色々と話したことは私にとって良い経験であり、良い思い出になっています。

ガハガハと笑いながら大きなノミを梁桁に突き立て刻みをしていたイメージでしたが、今は最新のiPadproを持って3D画像を見せてくれたのには私にとってかなりの衝撃でした!

1時間少々お話しできましたがあっと言う間でした。

私が熊谷を離れてからは、白根工務店さんは本来の強みである伝統工法の普及により磨きをかけて取り組まれておりました。

敷地で寝かせていたのは栗の梁材です。

好んで曲がった梁材を使っているようでした(笑)。

白根さんが元請として工事をしている現場に入っている左官屋さんなどの職人さんなども多くの方と交流させていただいてました。

そして忘れた頃に近況連絡で電話があったり、思いもよらぬ相談依頼があったりと良い関係を続けさせていただいています。

当時も今も、白根さんの言葉の節々には大工の誇りや自信を感じます。

そして家業として長く続けて来られた血にも。

山にある木をどう活かして使うか。

自然の木なりの形の木材どう組み立てたのかわからないほど複雑な木組みを実現する事に無限の可能性を感じ、簡単な仕事は眠くなる、難しい仕事でないとやる気が出ないとおっしゃっておりました。

でも、白根さんの直系の後継者がまだいない様子がとても寂しい事です。

見習いの大工さんの多くが建売住宅の現場に引き抜かれてしまっています。

日本全国にこうして無くしてはならない伝承技術が失われてしまっている実態があります。

何とかしなければ、とまた強く感じる日となりました。